成長の可能性、その片鱗を見せてくれた選手も
総合的に判断してサポート選手を選考
■協会が発足し初めてのイベントとして夏合宿を終えた今、感想はいかがですか。
山本:非常にいいイベントができたのではないかな、と。ただ、イベントを評価するのは僕らではなく、参加してくださった親御さんをはじめ、参加選手だと思います。いい選手を発掘しようということでイベントを企画して本当に優秀な選手が揃っていたなと思いますし、この中で、どうしても順番を付けたりとか、選抜するということなので、応援する選手、そうではない選手が出てきてしまうのは、本当に心苦しいです。
■これから選考、協議をしていくのだと思いますが、今の段階で何人くらいがその俎上に上がっているといった感じでしょうか。
山本:そこはちょっと難しいですし、ここで具体的な数字を言ってしまうと、そこから結果がぜんぜん違う数字になってしまってもいけないので、具体的な数字は控えたいと思います。「この子は確実に将来伸びるだろうな、応援したいな」という選手もいましたし、今回上位ではないにしろ可能性を秘めている選手がいたのも事実です。この年代は多感な時期で、何か一つ、どこで花開くかわからないくらいですし、裏を返せばここから爆発的に隠れていた才能が一気に開花する可能性があります。今回はスクールではなく、今持っている力を見させてもらって、来年応援するという合宿でした。これをスクールや成長を促すスクール形式の合宿にすることで、花の咲き方が変わってくる可能性はあるかなとは思いました。そういった片鱗を見せてくれた選手も多くいましたので、選考に当たって悩むポイントではあります。いい形で、選手の成長を促せるように、枠組みを構築しなおして、いい形で来年応援できればいいと思います。
■今回はカデット対象で小学生のドライバーでしたが、その上にはジュニア相当・中学生対象といった年齢カテゴリーはあります。協会が掲げる2本柱の「育成」「普及」の育成といった面では、サポートする選手の年齢を上げることも視野に入っているのですか。
山本:協会としての目先のゴールは国内のFIA-F4、もっと先で考えればF1ドライバーや国内外で活躍できる選手を輩出することが目指すべきところです。それを考えると、カデットとジュニアだけをサポートして「後は頑張ってください」は無責任でもあります。今回は初年度なのであまり風呂敷を広げすぎても、自分たちが手薄になってしまうので、まずはカデットからジュニアへ上がる世代を手厚くサポートしながら、来年以降は上のクラス、今回見た選手たちが上のクラスにステップアップしていくので、その子達を継続的に見つつ、キッズカートで頑張っている子がカデットやジュニアに上がるタイミングで、世代交代で新しい世代を応援していく。そうして規模を拡大していこうという青写真は描いています。
■それと同時進行で、もう一つの柱である「普及」にも取り組んでいくのですね.
山本:協会としては育成をするための協会ではなく、育成も柱の一つですし、大きなもう一つの柱が普及となります。子どもたちだけでカート業界が成り立っているわけではありません。子どもたちだけの世界になってもいけないと思っています。カートに取り組める大人の方もいた上で、子供と共存しあえる環境を作ることも、普及の一つだと捉えています。カートの良さ、他のスポーツにはないカートならではの良さは、これだけ幼少期に大人の人と接しながらできるスポーツってないと思うんです。野球などは同じ年代の子どもたちが集まって、コーチはいたとしても、圧倒的に子供の数のほうが多い。でもカートコースに来ると子供よりもオフィシャルや事務局、メディア、メカニック、チームスタッフもほとんど大人の方で、その大人たちと社会勉強ではないですが、社会と触れ合うきっかけがカートを通じてできるのは一番の魅力ですし、胸を張って他のスポーツにはないいところだと言えるものだと思っています。普及の観点からも、大人でホビーで楽しむ方も楽しんでもらえる環境、みんなで楽しんでもらえる環境を作りたい、携わりたいという気持ちは強くなりました。
■今回のイベントを終えて、一区切りしたかと思うのですが、これからの動きで具体的に考えていることはありますか。
山本:正直、現段階で次に決まっていることはないです。まずは、今回の選抜合宿で来年のジュニア選手権に参戦する応援選手を選抜して、その子達にどういった形でサポートするのがいいのか。資金が全てではないし、資金だけ渡してそれが育成かと言われれば、そうではないと思っています。当然、お金はかかるスポーツなので、資金は必要です。でもそれ以上にスポーツ選手として、10代の頃から学べるものをいち早く取り入れられれば、10年後に20代になっても、スポーツ選手としての大成の仕方は大きく変わってくると思います。どういったサポートの仕方が、子どもたちにとって有用なのかということは、協会で揉んで来年のサポート体制を構築したい。目先で決まっていることは、そういったことです。
ただ、ざっくりとは今回は夏合宿の1回のイベント、時間も限られている中で、このイベントに時間も労力も割いてしまったのですが、来年この合宿を実施するのなら、もっと手前から準備をしていきたい。準備の一環としては、地域にも協力してもらって、各地域で絞ってもらって夏合宿を最終的なスカラシップ選考会とするピラミッドを構築するとか、地方で揉まれて最後ここに集まるといった図式が作れると、より層が厚くなるし、地方も活性化するのかなと。その辺りは具体的には決まっていないですが、漠然とした構想としてはあります。
■今回改めてじっくりと見て、自分が現役でカートをやっていた頃と違いは感じましたか。
山本:自分の幼少期に、これほどプロドライバーと接する機会があって、これだけ色々なプログラムが用意されているスクールや合宿って、ありませんでした。一つ挙げるなら、鈴木亜久里さんのARTAサマー合宿が近いのかなと思いますが、僕は生徒で受けたことがないです。ARTAのサマー合宿、今回の合宿もプロドライバーと接する機会があるのは恵まれた環境だと思いますし、そこは昔と違うな、今のほうがいい環境を用意されているのではないかと思います。ただ、いつの時代も負けて悔しかったり泣いたり、負けたくない思いがあるのは変わらない。この世界では競争が今もあるのはわかりました。昔にあって今はないことは、ないのかなと思います。
■走らせ方やマシンの特性とかはどうでしたか。
山本:これはぜんぜん違うなってことはなかったです。タイヤの性能が上がったので、今のほうがグリップさせて走っているという面はあります。その分、レースは大変なのかなとは思いました。ただ、昔と比べる必要もないし、今の中で優秀な子、それは振る舞い方だったり目上の方との接し方であったり、この3日間は走っているところ以外を見た自負はあるので、そこも見て総合的に判断し応援したいですし、育成、教えることで伸びる子もいるので、そうした子も継続して何らかのサポートはしたいと思いました。